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自民党や公明党、立憲民主党など日本の多くの政党や有力な政治家が、中国共産党の創建100年を祝うメッセージを送った。
民主主義を奉ずる国の政党、政治家の行動にふさわしくない。日本の名誉と国益を損なうものでもある。
自民は二階俊博幹事長、公明は山口那津男代表、立民は枝野幸男代表、社民党は福島瑞穂党首の名義で、電報などで祝賀のメッセージを伝えた。立民の小沢一郎衆院議員、河野洋平元衆院議長もメッセージを送り、中国共産党の歩みを称(たた)えた。
自民、公明、立民は、中国側から要請があったため儀礼的に送ったと説明している。各党と中国共産党の交流に歴史があるのは確かだ。だが、今このときに祝意を伝えることがどのような意味合いを持つのかきちんと考えたのか。
独裁政党であり、自由や民主を求める人々の弾圧者であり、国際秩序の攪乱(かくらん)者である中国共産党を後押ししたことになる。国際社会から批判されている中国共産党は外国の政党などからの祝賀メッセージを、自己正当化の宣伝材料に用いている。
安易に祝意を伝えた二階、山口、枝野各氏の見識のなさには驚く。恥ずかしくないのか。
枝野氏は記者会見で、香港やチベットなどへの人権侵害を忘れたものではなく、隣国としての儀礼的なメッセージだと説明した。山口氏は記者団に「一つの政党で100年を迎えること自体、なかなかない。なお一層、世界の平和と発展、安定のために力を尽くしていただきたい」と述べた。何を吞気(のんき)なことを言っているのか。
問題は新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港などでの深刻な人権侵害にとどまらない。中国共産党の政権は尖閣諸島(沖縄県)を奪おうとしている。台湾を武力で威嚇している。南シナ海では国際法を無視して覇権を追求している。
日本の政党は、昔からの惰性で中国共産党と「友好」を続けてはいけない時代になったと自覚すべきだ。弾圧に苦しむ人々や国際社会の目を気にしてもらいたい。
創建100年への不用意な祝賀は、中国共産党の歴史的過ちを不問に付す問題もはらむ。天安門事件や文化大革命、大躍進運動、革命時の混乱で何千万人もの犠牲者が出た悲惨な歴史に目をつむって祝意を伝えるなど言語道断だ。
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2021年7月2日付産経新聞【主張】を転載しています